2020年3月31日火曜日

イベントの自粛要請

2月4週目、「三部作」もいよいよ佳境を迎え、連日の稽古で、テレビなど見る時間もありませんでした。ネットニュースでコロナの状況をチェックしながら、相変わらず、家と稽古場の往復をしていました。コロナの事が深刻になり始め、毎日、出来るかな。。。 中止かな。。。 出来る? やろう! など、頭の中で色んな思いがぐるぐると回っていました。他の団体の公演の中止、開催などの情報も気にしながら、最終的にはやるしかない!という思考に行きつき、稽古、準備に励んでおりました。

そして、忘れもしない2月26日です。
午前中、ホールに電話を入れ、コロナで公演ができるかどうか?会館での他の催しがどうなってるかを尋ねました。
やはりホールは、「財団のものはやっていますので、やるという事でいきましょう!」とお話頂き、何とかなるかな・・・と思いながら稽古へ出かける準備をしていました

ちょうど家を出る直前、お昼すぎに、童謡コーラス事務所の代表、うえたく先生から電話がかかってきました。童謡コーラスさんには、稽古場を提供頂き、また宣伝、広報、チケット販売にも多大にご協力を頂いていました。オペラを主催するにあたり、大掛かりなイベントをするにあたって、色々相談にのって頂き、沢山のアドヴァイスも頂いていました。
「さっきの安倍総理の会見、見た? 三部作、公演が出来なくなる可能性もでてくると思うから、そのつもりで動き始めた方がいいよ。今すぐに、ホールとオーケストラに連絡をして、先の予定、空いている日にちを聞いておいた方がいい。」との連絡を頂きました。

その電話で安倍総理の会見を知りました。全国のイベントの自粛要請です。
この翌日には、全国の学校の一斉休校が発表されました。

すぐに、ホールとオーケストラのマネージャーに電話を入れ、3/7の中止、延期の可能性がでてきてるので、4月以降で空いている日にち、公演ができる可能性がある日にちを挙げて頂くようにお願いをしました。それぞれメールで連絡を下さることになり、稽古に出かけました。

稽古に行く途中には、出演者の江原さんからも連絡を頂きました。
今、東京でお仕事、収録を終え、これから新幹線に乗るんだけど、今日の稽古あるよね?
と、やはりお昼の安倍総理の会見を受け、心配されて連絡を下さいました。

もう、皆さん稽古場に向かっている時間だし、今日はやるという事で進めてます。
今後の方針、また相談させて下さいとお伝えすると、
「分かった!とりあえず行くわ!」とおっしゃられ、大阪に向かって下さいました。

色々思う中で、お昼の稽古が終わりました。
夜の稽古が始まるまでの休憩時間、ちょうどその時にホールから電話が入りました。
お昼以降、安倍総理大臣の会見以降、「オペラはあるのか?」「延期をしてほしい」との問い合わせ、要望の電話が相次ぎ、対応に追われているとのこと。
この状況をみて、延期するようにして下さいというお願いの連絡でした。会館も朝話していた時と全く違う様子でした。安倍総理の会見後、色んな流れが一気に変わったように思います。

また、稽古に来ているメンバーの一人に、関西歌劇団所属の歌い手さんがいました。3月1日に「関西歌劇団70周年記念コンサート」という、団をあげての大きなコンサートが控えていましたが、さっき中止、延期に決まったと話してくれました。

稽古後に、関係者、主要メンバーに集まって頂くことにして、夜の稽古が始まりました。

夜の稽古から参加予定だった江原さんも加わり、「ジャンニ・スキッキ」の稽古が始まりました。
「ジャンニ・スキッキ」は、私の出番が少なく、皆の稽古を沢山見る事が出来ます。
皆のパフォーマンスが素晴らしく、楽しくて、面白くて、感動して、コロナの事も忘れる時間でした。

あっという間に夜の稽古も終わり、スタッフさんから「明日の稽古場もここです!」とアナウンスがあり、「また明日!」と皆と別れました。
この日が最後の稽古になったのですが、この後の話し合いで最終決定するまでは、皆にお知らせをすることが出来ずに皆と別れました。 


2020年3月30日月曜日

「三部作」怒涛の2月

約2年前から計画していたオペラ「三部作」ですが、実際にキャスト、スタッフが集まり、昨年の11月から音楽稽古が始まりました。
ありがたいことに早々にチケットも完売し、2月からは立ち稽古が始まりました。
演目も3作品、キャストも多く、皆さんのスケジュールを合わせて稽古を組むことも大変でした。私自身も、3作品、頭を切り替えて3役に取り組んでおりました。

信頼するキャスト、スタッフの皆さんと一緒にプッチーニの作品に取り組みました。
沢山の人数で一つの作品に取り組むこと、ワンチームで大きな船に乗り、本番という到着地に向かって進んでいく作業、稽古の時間が私は大好きです。
作品の事を考え、自分が演じる役の事を考え、共演者の役の事を考え、どう歌って、どう表現してお客さんに聴いて頂くか、観て頂くかという事を考え、歌い、演じる稽古をする時間が大好きです。オペラをする醍醐味だと思います。

そんな充実した時間をすごしていた最中、2月に入って間もなくして、「コロナ」のことが、ちらほら聞こえ始めました。

2月の2週目に入り、キャストの数人から、「明日の本番がコロナで中止になった」「今週の本番がコロナで中止になった」と、間近で、コロナのために本番が流れていることを聞くようになりました。

アゼリアホールへ連絡をして、会館の様子を聞きました。「財団主催の公演は基本的にやっています。鳥インフルエンザやサーズで、他の会館が公演を中止している時も、うちは公演をしてきました。大阪府や市からの指示などが出たら別ですが、やるという事でおりましょう!」とのお返事で、その時は、まあ大丈夫、出来るだろうと考えておりました。

3週目に入り、チケットを買われてるお客様から、直接連絡を頂くこともでてきました。
コロナですが、どうなりますか?中止ですか?との問い合わせも増えてきましたが、基本的にはにはやろうと思いながら練習に励んでおりました。
お世話頂いてるONC(大阪灘クラブ)からは、「当日、万全の準備をしてやりましょう。マスクや消毒液の準備、手配はしておきます。」との心強い連絡も頂いておりました。

コロナの事だけでなく、本番が近づくにつれ、色んな準備に追われ、家と稽古場を往復するだけの毎日で、家には寝に帰るだけのようになってきていました。
準備に追われ、寝る間もなく、気づいたら食べることも忘れて・・
そういえば、昨日稽古に行く前にご飯を食べて以来、今朝まで何も食べてなかったなあ、と翌日、稽古に行く途中に気づき、途中で食料を買い、稽古場でご飯を食べるという日もありました。目まぐるしく時間が過ぎ、忙しすぎると食べることも忘れてしまうような日が本当にありました。

そんな具合で、2月に入ってからは、あっという間に時間が過ぎていきました。


☆3作品の楽譜、この3冊を常に持って稽古に通いました


2020年3月29日日曜日

「三部作」寄付金集め

「三部作」、色々を決めていく中で、同時に考えないといけないのがお金のことです。
予算書を作り、常ににらめっこをしていました。

オペラを上演する場合、特にオーケストラ上演となると、チケット代金の収入だけでは賄いきれない現実があります。大きなオペラ団体は、どの団体も助成金をもらって上演をしています。

軍資金集めには、私の音楽活動を常々応援下さり、大変お世話になっているONC(大阪灘クラブ)の強力なサポートがありました。メンバーの皆様のご尽力のおかげで、沢山の会社の御協賛を頂ける事になりました。
協賛の趣意書の作り方から始まり、お願い、お礼、請求書を出して、領収書をお渡しする方法など、何から何まで教えて頂きました。
折々に集まって下さり、相談にのって頂き、一緒に真剣に考えて下さいました。

実際に、趣意書を持って、色々な会社へ伺うこともあり、緊張しながらオペラの良さ、公演をする意味などをお話しました。お忙しい方々が、私のような一音楽家の話に、時間を取って耳を傾けて下さった事だけでもありがたかったです。
会社勤めをしたことがない私にとって、企業のお偉い方々のお部屋に通して頂くことも貴重な経験でした。

他にも音楽を通して、今までご縁があった方々から寄付金を頂き、目標にしていた金額にほぼ届き、予算的にも公演が現実的なものになりました。

また、初めて助成金の申請も提出しました。助成金関係は、初めて提出した時は、99%通らないと聞いていましたが、ダメ元でも、とにかく出せるものは出してみよう!というスタンスで出してみました。書類を作ること、揃えることは、慣れていないこともあり、分からないことも多く、大変でした。

大阪府の助成金も出すことにして、説明会が開かれてることを知り、伺うことができたので行ってきました。音楽だけでなく、演劇、文楽、ダンス、様々な団体が参加していて、いくつかの団体の事情、お話も聞くことができました。

そんな中で、朝日新聞文化財団から助成金交付の連絡を頂きました。この財団への申請は推薦書が必要で、指揮者の広上淳一先生に書いて頂きました。先生の推薦書のおかげで助成金を頂くことが出来たのです。
広上先生には、私の文化庁の留学の際にも推薦書を書いて頂き、留学させて頂きました。
重ね重ね、感謝しかありません。

沢山の方々から頂いたお気持ちに感謝する一方、この公演への大きな期待も感じ、皆様からの応援、お気持ちに添うような本番にしなくては、推薦書に恥じない公演にしなければというプレッシャー、責任も感じるようになりました。

本番の約2年前から、沢山の人達のご協力の下、長い時間をかけて進めてきました。

今、振り返りながら、整理をしながら書いています。それぞれに色んな事があり、悩んだり、迷ったり、落ち込んだりもしましたが、応援して下さる皆様の支えがあり、またお気持ちに助けて頂き、公演に向けての準備に取り組むことができました。


余談ですが… 
今日、初めて今年の大河ドラマ「麒麟がくる」を見たのですが、オープニングのテロップに広上先生の名前を見つけて、嬉しくなって音楽を聴かせて頂きました。オープニングのNHK交響楽団の音楽を指揮されていて、お名前が大きく出ていました。今年の大河、広上先生の指揮だったんですね!


広上先生の指揮で、大河ドラマ「龍馬伝」を歌わせて頂いたコンサート

2020年3月28日土曜日

プッチーニオペラ研究会「三部作」

オペラ「三部作」の上演は、プッチーニのオペラ、全作品を歌いたいという事から始まったプロジェクトの集大成として取り組んできた企画です。
2013年「トスカ」、2015年「マノン・レスコー」、2018年「西部の娘」をピアノ伴奏で上演してきました。この上演に合わせ、「プッチーニオペラ研究会」という名前も作り、順に上演して参りました。

2018年5月、東京で「西部の娘」を終演した頃から、「三部作」の上演が頭の中に浮かび始めました。
最初は、ピアノ伴奏での上演を前提に話を進めていたのですが、色々な人に相談をする中でオーケストラの話が浮上し、ザ・カレッジオペラハウス管弦楽団にお願いをすることができました。

この企画で、オーケストラでの上演の場合、オペ管(ザ・カレッジオペラハウス管弦楽団)にお願いしたいという強い思いがありました。
言葉を理解して、言葉につけて下さるオーケストラとして、オペ管、そしてコンサート・ミストレスの赤松さんには絶大な信頼がありました。
赤松さんにアポを取り、オペラハウス管弦楽団にお願いにあがりました。

オペ管は大阪音楽大学管轄のオーケストラで、外の仕事、新しい団体との契約を積極的にしていないという事で、すぐにお引き受け下さるかどうか分かりませんでした。
お引き受け下さるかどうか、大学の決定には1か月ほどかかるとのことで、お返事を頂くまで、ドキドキしながらの1か月を過ごしました。
お願いできるとの連絡を頂いた時は本当に嬉しかったです。

また、公演の企画書を作り、いくつかのホールに持ち込み、お話を聞いて頂きました。
以前、演奏会形式で「トゥーランドット」を歌ったことでご縁があった、池田市のアゼリアホールが、ぜひにと取り上げて下さる事になりました。
ちょうど池田市制80周年に当たる年で、その事業として上演頂ける事に決まりました。
「トゥーランドット」もプッチーニ作曲のオペラで、ご縁を感じました。

そして、キャストですが、「ジャンニ・スキッキ」をする際は、絶対にお願いしたい!と、ずっと考えていたのが、江原啓之さんです。
江原さんとの出会いもずいぶん前になります。私が、初めてプッチーニのオペラを歌った、初めて主役を歌わせて頂いた関西二期会の「ラ・ボエーム」で共演させて頂きました。それからのお付き合いで、今回お願いしたところ、お忙しいスケジュールを調整して下さり、ジャンニ・スキッキ役を歌って頂ける事になりました。江原さんをはじめとして、ご活躍中のキャストの皆さんにお願いすることができ、キャストも決まっていきました。

それぞれ時間がかかり、大変でしたが、ホール、オーケストラ、キャストと決まっていきました。


             ☆ボエームで共演した江原さんと


2020年3月27日金曜日

オペラ「三部作」延期

ブログでのご報告、また発信が滞ってしまい、申し訳ありませんでした。

今月3/7に公演予定だった 池田市制80周年記念公演 プッチーニ オペラ「三部作」は新型コロナ感染症拡大防止のため、延期になりました。

来年 2021年4月11日(日)14:00 池田市アゼリアホールで上演が決まりました。

ぜひご予定頂きますよう、皆様のご支援、ご協力を何卒よろしく願い申し上げます。


公演の中止、延期を決めたのが、2/26でした。あの日から、ちょうど1カ月です。
色々な決断、また対応に追われる1カ月でした。
この1カ月の間に、思ってもいなかった世界的パンデミック、大恐慌となり、これからどうなるのだろう、いつ収束するのだろうと不安に思いながら、毎日を過ごしています。
日本だけでなく、世界中の経済がまわらなくなっていますが、クラシック業界、音楽業界のこれからが心配でなりません。

今回、私はオペラ公演の中止、延期を決めた渦中に居りました。演奏活動をしている中で、常々、出演する大半は、主催者がいて、オファーを受けて出演をしますが、今回は私自身が主催、プロデュースをするという立場でのオペラでした。

中止を決め、延期を決める事が出来たのは、応援して下さる方々のお気持ち、またお知恵も頂き、そしてお客様に最高のパフォーマンスを届けようという同志、歌手仲間とスタッフさん、皆に支えて頂いたおかげです。

葛藤の中で、責任を感じながら、覚悟を持ちながら、公演の中止、延期を決めました。主催者として、歌い手として、その時の状況を綴っていこうと思います。その責任もあると思いますので、順に書いていこうと思います。

コロナの収束、文化、音楽業界の復興を願って。今日はこの辺で。。。